現在進行形の撮影内容は守秘義務が有るのでなかなか細かい所までは話せない、なので今日はハヤサキスタジオ時代の昔話をします。

私がカメラマン駆け出しの頃、その日2本目となる撮影がワインの単品切抜きカットでした。
ライティングがほぼ出来上がったのが夜中の2時頃だった。
その時1stの重たいドアが開く音がした。
アシスタントと同時に振り返るとそこには少し御酒臭いおやぶん(早崎治社長の事を敬意の意味を含めておやぶんと呼んでいた)が立っていた。
「お〜!澤田!チャンとコントラスト付けとるか」とご機嫌な口調で私に語りかけてきました。
「ハイ」と言う前におやぶんはビューワーの上に有った55ポラを見て私がセットしたライトを見るや否や全身であっとゆう間に壊したのだ。
そして、何事も無かったかのようにワインだけがスタンドの上にポツンと今にも落ちそうな感じで立っていた。
「澤田、お前は何を撮っているんだ!」
先ほどのご機嫌な口調とは別人のような息の荒い強い口調だ
「ワインです」
少し震えていたかもしれない自分の声はなぜか聞こえなかった
「違う、チガウ、ちがう、お前の取っているのはガラス瓶、紙のラベル、金属のキャップだ!
ワインじゃない」
声が出ない
「このワインは若いワインだ、それなのにお前が撮ろうとライティングしたこの同じワインは年代物の高いワインだ。分るか!目立つ物にばかり目がいって、肝心のワインの香りがにじみ出てない」
言葉が出ない、自分の体の震えが分る。
無言の時間が過ぎて行く、息苦しく真っ白な時間が。
「少し頭を冷やしてからやり直しなさい」
ゆっくりと少し優しい口調で私に言うと大きく深呼吸してからおやぶんは出て行った。
数分の出来事だったろうが私には今日の全ての時間だったように思えた。
おやぶんはとてもベーシックでシンプルな考えをする方だと思う。
一番大切な物 それはワインです。 それもジューシーな若いワインなのです。
私は瓶やラベルの丸みやグラデーションばかり見て基本を忘れておりました。
ハヤサキスタジオ時代の修行が今の私を支えてくれています。
そして、これからも。
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